神崎恵さんというメイクアップアーティスト
先日NHKの「プロフェッショナル仕事の流儀」で神崎恵さんというメイクアップアーティストの方が出ていらした。
松雪泰子風の美人で44歳、三人の子持ちとは思えない程に若々しい。
バリバリに働いていながらもホンワカとした雰囲気を持ち、「私もこんな風になりたい!」と多くの日本人女性に思わせるであろう雰囲気を持ってらっしゃる。
引っ張りだこのプロメイクアップアーティストでありながら自らもファッション紙の表紙を飾る売れっ子のモデルでもある。
自らメイクを完成させるモデル?
モデル自らその服を生かすメイキャップをする。
なんてコスパ最高なのか、と感心してしまった。
自分が一番キレイに見える術を知っている。
何て強いんだろう。
私自身といえばあまりに程遠くて、こんな風になりたいどころか、
「ああこんな人がいるんだあ」
と、他の星に住む人を見るような気持ちで観ていた。
プロとしてスタートしたのは29歳と遅咲きの方
神崎さんがメイクアップアーティストとしてスタートしたのは29歳の時だそうだ。
決して早い方ではない。増してや業界そのものが流れが速い性質を持っている。
10代、20代前半のカリスマインスタグラマーも多く、ここロンドンにも有名な(授業料の超高い)メイクアップアーティスト養成学校もあり各地からプロを目指す人が集まってくる。
成りたいという人は多いが、プロとして食べていける人がどれだけいるのか。
競争の激しい、体力の要る仕事だと思う。
神崎さんは元はスカウトされて芸能界入りしたそうだが、あまり日の目を浴びないままに引退されたとのことだ。
その後、結婚、二児を出産、そして離婚。
シングルマザーになってからはお母様にお子さんを預かってもらいながらアパレルの仕事に就き、同時に簿記の資格を取る勉強をしていた。
子供にご飯を食べさせる、という正に背水の陣的な人生の再スタート
結婚していた時ほどご飯が美味しくないと子供に思われたくなかった、というプライド。
必死、というと使い古された言葉の感があるけれど、誰の人生にもそんな時期があるのだと思う。
それぞれ形が違えど、何がなんでもやらなきゃとなり振り構わずガンバル時。
その時自分が考えたこと決めたことをどう行動に移すか、ダメならまた次、またその次とチャレンジし続ける時。
朝5時起きで仕事と勉強、子育てを続ける一杯いっぱいの中、ある日ママ友からとメッセージが入る。
「あの時の恵の一言に救われた!」
それは、
「忙しいけど、クリームチーク塗るだけで気分上がるよね?」
と彼女が言った言葉に対してだった。
自分がした事で人に感謝される。
誰かの人生を明るくする力になる。
自分を人に認めてもらえる。
自分のやりたいことはこれだ!

生命保険を解約し、改めて美容を学び、小さいながらも自分の美容サロンをスタート。
そこから着々と仕事をし、結果を出し、10年かけて注目を集めて行った。
そして今では複数の雑誌に連載を持ち、何万部単位で売れる本を次々に出版し、化粧品メーカーからアドバイスを求められている。
有名になってもなお。彼女のここがエライ!と思った2つのこと
* 研究心
忙しく動く中にもドラッグストアを度々訪れ、絶えず市場に出回る商品をチェックしてる。
そこで売られる商品には「くすみに効く」「美白」など商品効果を謳ったラベルが必ず貼ってある。そこから今何が求められているか、どんなものを人が欲しがっているのか常に消費者のニーズをチェックしている。
* お金だけで動かない
「大きなお金を積まれても、自分が宣伝したり関わった商品が消費者に満足されないものだったら、それが将来の自分の評価に跳ね返ってくる。だから自分が納得しない商品には関わらないと決めている」
この人は自分の信じていること、大事にしていることに時間とエネルギーを惜しみなく使い、かつ愛情を注いでいる。
そして自分のスタイルを貫く力強さを持っている、そこが凄いと思った。
一見柔らかそうで実はとても芯が強い、ビジネス感を表に出さずに年商億単位。
料理界なら栗原はるみさん的存在?
人気が高いのもよーく分かる。
この番組では以前、イガリシノブさんという人気ヘア&メイクアーティストも出演しておられた。
イガリさんはサバサバとした性格で、仕事の現場ではいつもモデルを引き立てる黒で身を固めている。
あまり自分のことに気を使わないタイプの人だった。
全くタイプの違うお二人であるが、それぞれに絶大な支持を受けている。
どちらにも共通していることは、
「人に力を与える」ことに生きがいを感じていること。
メイクの力は大きい。
自分がどう見えるか、それを人が見てどうとかいうよりも、自らにハッピーでいられるかどうかに関わっているからだ。
過去記事で、同様にプロフェッショナルに出演された桑田ミサオさんについて書いたことがある。
笹餅ばあちゃんこと桑田みさおさん93歳
93歳になられる彼女がローカル線で笹餅を売りに出かける時、自らの身支度を整える様子をカメラが捉えていた。
カスリの上下を着て姉さんかぶりをし、顔にローションをつけ、薄化粧をして気持ちを高めていく。
まるでこれから舞台に上がる役者さんがそうするように。
普段控えめな彼女が電車でお客さんとお喋りをし、歌を歌い、自分が心を込めて作った笹餅を売る。
そして彼女に会いに遠くからやって来たお客さんたちが本当にそれを喜んでいるのだ。
それは見ていて本当に感動する姿だった。
ここでもメイクはたとえそれが口紅一本でも人に力を与えている証拠だと思う。
番組最後に神崎さんが「今のハヤリ」と一押ししていた眉毛の描き方に惹かれた。
彼女は有名になった今も、昔から続けている眉毛描き方レッスンを少人数クラス単位で行っている。
なんと眉毛の描き方一つを3時間かけて教えている。
予約が取れない人気ぶりだそうで、来ている人は職業も年齢も様々。
皆それぞれに「自分に自信をつけたい」目的で参加している。
眉毛の生え方を理解し、位置の確認をし、形の決め方を習い、アドバイスに沿って自分で描けるようになるまでがその3時間。
眉ペンシル、眉描きブラシ、眉ラッシュ、整えブラシを駆使して皆な超真剣だ。
たかが眉毛、されど眉毛。
確かに人の印象は眉毛一つでガラリと変わる。
レッスンの様子はちょっと鬼気迫るものもある。
それぐらい皆な自分と向き合っている。
描いては消し、描いてはまた消し、いつになっても仕上がりに満足できない人もいる。
それでも最後の一人がやっと納得した時の達成感、その人が自分の顔を見て本当にハッピーと感じる瞬間が訪れる。
見ているこちら側も嬉しくなった。
その人の顔がパーッと明るくなるのだ。

自分がどうあるかにハッピーじゃなかったら、外に出たくないもん!
人が見てどうこうじゃないの。
自分がハッピーかどうかなの」
人に自信を与えるのは必ずしも外見ではなけれど、自分の気持ちを上げるのに、メイクアップや着るものが役立つのは確かだ。
それはどれだけお金を使ったかではなく、どれだけ自分を満足させることをしたかだと思う。
まあ確かに眉毛は顔の印象を大きく決めるもんね。
トシ取って眉毛が薄くなってくると、それがしみじみと分かる。(とほほ)
「眉毛なんて最後に描いたのは先月ママ友数人とズーム会議をした時だったっけー」
番組が終わってから鏡を見た。
生活に疲れたオバサンの顔がそこにあり、ギョッとするというよりは何だか情けな〜い気持ちになる。
「ちょっと試してみようっと」
もう夜の10時だったが、BBクリームを塗り、眉毛描きに挑戦。
番組では今眉頭から眉山まで太さがほぼ同じという太めの眉がハヤリということであった。
眉毛がはっきりすると、目元もはっきりするのだそうだ。
眉毛用ブラシもラッシュもないが、手持ちのペンシルと眉を整えるブラシで番組を思い出しながら描いてみる。
苦闘30分、ちょっとそれらしい形になった自分の顔を鏡で見て笑った。
眉毛がいつもより太くはっきりしたオバサン、さっきよりちょっとハッピーかも。
ロックダウン生活が長引いて、すっかり人と会う機会がなくなってしまった。
出かけるのは生活必需品を買うための近所のみ、おまけにマスクをしている。
お化粧どころか着るものにも全く構わなくなり、同じTシャツ数枚とジーンズ2本を繰り返し着るだけのサイクル。
(家ではそのまま外には出られない楽な格好をしている)

気持ちにメリハリがなくなり、自分がどう見えるかなど全く何にも構わないのが当たり前になっていた、今日この頃。
家にいてもたまに化粧してみっか。
眉毛描く練習にもなるし。
そうして自分の気持ちを上げる、ということが自分を大事にするという事ではないか。
そうだ、そうしよう。
(きっと家族は全然気づかないだろうけど。まあその方がいいかも)
それにしても眉頭をいつもより高く描くって勇気が要る!
教室でも最後まで苦闘していた女性は、
「ほんの1ミリの違いなんだけど、ちょっと足りない」
と言われていた。
1ミリ飛び出す勇気、必要な時もあるよね〜。
著書もたくさん