ロックダウン生活が長引いて、とうとう大ヒット作と言われる韓流ドラマ「愛の不時着」を見始めてしまった
そして既にハマっている、どっぷりと。
正直、第1話を見終わって、
「北朝鮮と韓国をまたいだラブコメかあ〜、本当にこれから面白くなるのかいな?」
と言うのが感想だった。
80年代風ののファッションで固めた韓国女性の主人公のキャラといい、彼女を取り巻く環境といい、あるある設定のスタート。
彼女を取り巻く全ての登場人物がそれぞれお決まりの役割を背負ったキャラ揃い。
こんな使い古された設定で、これから一体どういう盛り上がりがあるのか?とかなり訝っていた。
推してくれた友人たちの、
「最初の1、2話のスローテンポを乗り切ったら絶対ハマるから」
という言葉を信じ、1〜3話まで数日を置いて観ていた。

4話からは毎日1本観ている。
うわー、これはアラフォー女性の為のフェアリーテールだったのかあ!
と観る途中から気がついた。
(自分はもう過ぎているけど、それはまあ置いといて)
気がついたけれどこちらももう止まらない。
次がどうなるのか知りたくてしょうがない。
単純だと思っていた話がどんどん広がり、大勢の登場人物が過去も織り交ぜて絡み合う。
ラブストーリーに犯罪のサスペンスを絡ませ、国の闇の部分も見せる。
あの二人はどうなるのか?
あの事件がこのあとどう絡んでくるのか?
彼らが38度線を超えられる日が来るのか?
そして最後にはどんな結末を迎えるのか?
(ここはまだ観てない。情報も見ないようにしている)

ヒロインのキャラ設定
大きなビジネスエンパイアを展開する社長の娘。
彼女自身が設立したファッションビジネスで大成功している30代半ばぐらいのビジネスウーマンで、人に対する態度もかなり傲慢な社会的セレブ。
自分の好きなものはなんでも自分の力で手に入れる、お金であろうがボーイフレンドであろうが。
その一方で、不仲な家族とは冷え切った関係で、愛に恵まれなかったらしい幼少期の陰を持ち合わせている。
モノに恵まれた生活を楽しみながらも、何かいつも自分に欠落したものがある、逃げ場のないような閉塞感をぬぐい切れないでいる。
うーむ、これは。
彼女ほど経済的に成功していなくても、今の多くの女性、特に仕事をしている30代&40代の人たちに共通していることじゃなかろうか。
不幸せではないが満たされていたい、この行き詰まった状況から抜け出す大きな力を常に模索している。
突然どこからか現れて自分を変えてくれる何か、あるいは誰かを待ち望んでいる。
ドラマの場合、そんな彼女の前の行き着く先が北朝鮮で、そこに現われた運命の王子さまが前線近くの軍人だった。
(ここまで読んだ人はもう観終わってますよね?)
背も高く整った端正な顔立ちと、規律の取れた機敏な立ち振る舞いの若きキャプテン。
部下から慕われる人柄を持ち、拳法の達人でありながら、実はプロ級のピアノの才能があり、スイス留学経験を持つ育ちの良さ。
(すごい設定だ、ここまで徹底していると笑うよりも感心する。漫画でもここまで造らないと思う。)
彼女ががどんな無理やわがままをを言っても、戸惑いながらも何でも最後は応えようとする。
そして何よりも何よりも、
恋人関係にもなっていない彼女を救おうとするため、自分のポジションを投げ打って命の危険までも冒すのだ。
何回も、何があっても、決して諦めないで。
どんな危ない目にあっても怪我を負っても決して彼女にそれを見せようとしない。
「なんでもないよ」
「危ないことは何もしてないよ」
「大丈夫、心配は要らないよ」
と命がけのアクションの後に微笑んで言葉短かに言う。
彼は(ここが大切!)決して見返りを求めない
強くカッコよく、純粋な心を持った、
唯一「彼女の幸せ」のみを願う年下の彼。
そんなパートナーに恵まれていない人はもちろん、
たまにバスタブの一つも洗ったぐらいで
「キレイに掃除しておいてやったぞ」
などと恩着せがましく言う疲れたダンナと暮らしている女性には、
「あんな風に自分を守ってくれる王子さまがいてくれたら!」
と心浮き立つものがあるんじゃなかろうか。
(エエ、浮き立ちましたとも!)
てか、そんな男性、本当にこの世に存在するのか?
てか、あんな純粋な心の持ち主は資本主義の国にはもう存在しないと誰もが思ってるんじゃないの?
「それで北朝鮮だったのかも……」
(閉ざされた国=おとぎの国?)
オバサンの想像は膨らむ。
その他,北側の諸々の登場人物、とても個性的で魅力的だ。
このドラマを作るに当たって、脱北者から沢山の「北での生活」についての情報を集めたという話だ。
強調された部分や作り上げられた事も多分にあると思う。
だが、都市部では権力を持つ人に富が集まり、南とそう変わらぬモダンで裕福な生活を送っている上層階級がいる、
その一方、舞台となる地方の農村部では、30年ぐらい時代がスリップしたような古い様式の生活を強いられる人が大半、というのはあながち嘘ではないだろう。
日本だって戦争の少し後ぐらいまではそうだったのだ。
やたら停電があるのも、そんな昔の話ではなかった。
でもその押し並べて慎ましい生活をしている人たちの間でも、上下関係があり、村の仕組みがあり、限られた中なりの生活の楽しみがある。
それらがドラマの中で演じられる村人によってとても生き生きと表現されている。
特に30代&40代の村のおばちゃんグループが超面白い!
狭いコミュニテイに住むオバサン同士のわかりやすいチカラ関係、
思わず飛び出す正直な意見や態度、
水面下のせめぎ合い、
ゴシップと噂話が大好き、
一緒にお茶(たまにアルコール)を飲んでハメを外して騒ぐのも大好き、
ヨソ者に対しての警戒心が強いが、一旦輪の中に入ると結構めんどう見が良い、等々。
どの世界も変わらぬオバサン社会の構図が、ホント笑える。
その他脇役もキャラが立っていて、それぞれが話立ての大切な役割を果たしている。
登場人物の配置に無駄がないのだ、これだけ大勢のメンバーが揃って。
悪役(超悪役&ちょっと悪い奴)を除いては北朝鮮の人たちは「いい人」タイプが多い。
一見イジワルそうだったり身勝手そうな人が底は存外、人情味のある人だったりもする。
この辺、韓国のプロダクションが北朝鮮の生活を表現するに当たって気を使っているのかも知れない。
また、資本主義が進んだ国と、政府と軍に生活を統制される国との対比を人の描き方で見せているのもあるかな。
物質的に足りないものはあるが、人と人とのつながりは強い、コトあらば助け合う気持ちをもった人々。
人に対して誠実でありたいと思う心。
韓国の経済が急成長して人々の生活水準がグンと高くなったのはここ20年ぐらいのことだ。
「ちょっと昔の生活」を覚えている人もまだ多いに違いない。
北朝鮮にノスタルジーを求める気持ちも多少あるのではないかなあ、とここでもまた勝手な推測が膨らむ。
それにしても韓流ドラマにハマるとは、チャングム以来。
Netflixを毎日観ること自体、今までなかった経験だ。
まあチャングムの頃はNetflixもなく、アイパッドも持っていなかったけれど。
まだシリーズを最後まで観ていないが、一体どんな結末を迎えるのか?
(言わないで、お願い!)
全体に笑える部分も多い軽い作りになっているけれど、最後は38度線の重みを忘れないためにもハッピーエンドだけで終わって欲しくない……とも思ったりして。
どうなんでしょうね、そこんところ。
韓国の人たちはこれをどんな風に観ていたんだろうか。
それにしても「愛の不時着」。
これだけ流行ったのだから、北朝鮮のブラックマーケットでも密かに出回っているに違いない。
北側で観た人たちはそれこそこのドラマをどんな風に観るのだろうか。
主人公の相手になる男性を見て、
「そんな奴ァこっちにだっていねーよ!」
って、言ってたりして〜。