海外移住するならどこの国!?
イギリスは理想にどれだけ近いのかパート2
海外移住するならどこの国を選びますか?
前回に引き続き、四国にお住まいのブロガー・ヨスさんとの、
「ヨッ!センス_こんな国に行きたい! わたしが海外移住したい国の条件
という記事について、長らくイギリスに住んだ私なりに抱いた感想です。
前回で挙げた理想条件
1. 安全で治安の良い国
2.銃のない国
3. タバコの煙がない国
4. 性差別の無い国
5. 上下関係の厳しく無い国
までイギリス(といっても主にロンドンですが)と照らし合わせて色々書きました。
後半5つのお題
6. 医療レベルの高い国
7. 教育水準の高い国
8. 職場を定時に帰れる国
9. 自然がいっぱいの国
10.(できれば)西岸海洋性気候
これらについて、「イギリスはここんとこ、どーだろーか」という所を書かせてもらおうと思います。
医療レベルの高い国かどうか
先ず6、医療レベルの高い国。
うーん。これはねー。
イギリスの医療レベル自体は高いと思う、が、医療システムは底辺に近い部分もあり…とフクザツです。
イギリスにはナショナルヘルスという、誰でも無料で診察、診療を受けられる素晴らしいシステムがあります。
お金がある無いに拘らず医療の恩恵を受けられる…の筈なんですが。
(薬は基本的に有料。子供は無料)
なにしろ需要に対して供給がまるで追いつかない。
具合が悪くて病院に電話しても「じゃあ来週の火曜に来てください」なんて言われてしまう。
これはまだいい方で、「今月はもう一杯なので、来月にしてください。あ、まだ予約は受け付けてないので来月になったらまた電話して」って、なにーっ。
ここで引き下がってはならず、今診てもらわなかったら手遅れ、もう死んでしまう、ぐらいに言わないと今日明日の予約は不可能。
ロンドンとか、都市部は特にヒドイ!
救急車でA&Eに運ばれた後24時間担架に乗せられたまま病院の廊下に放って置かれた、なんて話もザラにあります。
「このシステムは既に崩壊している」なんて言われて久しいです。
じゃあ誰がどう建て直すんだ、そんな金どこにあるっ!?て、永遠の争議のまとですよ。
お金持ちにはプライベートの病院が幾つもあり、こちらは問題ありません。
優秀なお医者さんも高給でドンドン引き抜かれていくそうですし。
それでイザという時のために医療保険に入っている人も多くいます。
ナショナルヘルスで緊急であるべき手術の順番を半年も一年も待っていたら、治るものも治らないって。
この話を始めると暗くなるので次、行きます。
教育水準の高い国かどうか
7の教育水準。
うーむ、これも地域と家庭環境によって大きく別れるところです。
世界的に常にトップを行くオックスフォードやケンブリッジ大学などがあるように、高いところはとてもレベルが高い。
高いところは高いが、平均するとそうでもない?
でも国民的平均は?というとそうとも言えない。
やはりオックスブリッジに行くような学生は幼少期から名門私立出身者が多い。
日本だって同じようなものかもしれないけれど、イギリスの格差というものは日本のそれ以上にハッキリしています。
子供が優秀であっても裕福ではない環境に育った場合、格差を超えて上に行くにはやはり特別な助けが要るのです。
振り分けられるのが早過ぎる!
そして学校制度自体,子供がふるいにかけられる年齢もとても早い。
「ビリギャル」みたいに高校2年生ぐらいになってダメダメから奮起して有名大学に合格、なんてイギリスでは先ずありえない。
その年になったら、もう理数か文系かの変更も(最初からまたやり直すのでなければ)まず不可能です。
2年間の大学進学コースに進むと教科は3科目か4科目に絞らねばなりません。
1年ほどやって、「やっぱりこの教科は向いてなかった!」って思ってももう遅い。
後戻りができないんです。
この辺、イギリスの子供達はかわいそうだなあ、と思います。
将来の重要な選択を迫られる15歳なんてまだ未分化で、10年後の自分が何をやっていたいかなんてハッキリしている子はとても少ないんですから。
遅咲きの子だっています。スタート地点に立てないままふるい落とされてしまう子もいる。
文盲率も意外に高い
イギリスの成人では、全く読み書きができないか、中学レベルにも達していない人が全体の15%に登るとも言われています。
これってすごくないですか?日本ではちょっと考えられない。
イギリスは移民も多く、英語を話さないまま暮らしている人も多い。
またその子供も学校でよほど頑張らなければ学校の授業について行くのが難しい。
学校の先生だって、そういう子の多い地域ではみんなの面倒が見られるわけではない。
移民だけに限ったことではありませんが、高い教育を受けるチャンスを得難い環境にいる子供も多いのです。
イギリスの刑務所に入っている人達の半分は読み書きが満足にできないそうです。
子供時代、字が読めなかったら授業だってわからない。
授業がつまらなかったら学校だって面白くない。面白くないから行きたくない。
悪い連鎖の始まりです。
そんなわけで、教育水準が高いか?というのは、平均的には北欧のように全体が充実している国と比べ物にならないでしょう。
一部はとても高い。
でも広く押し並べて行き渡っているとは言えません。
上流・中流階級と労働者階級が長きに渡って完全に分かれていた国ですからね、そう簡単に溝は埋まらない。
最近はまた格差が広がっていると言われてますし。
職場を定時に帰れる国かどうか
キリがないので8、行きます。職場をを定時に帰れる国。
これは、イエスでもありノーでもある。
同じ残業するのでも日本人の場合、「一人だけ帰れない雰囲気」でダラダラ居残る人も多いでしょう。
でもイギリスでこれはあり得ない。
自分の仕事が終わったら遠慮なく定時でサッサと帰ります。
飲み会の付き合いもない。
ましてや上司のお付き合いでイヤイヤ…なんてのもない。
自分の仕事が終わってなくても「私が給料をもらっている時間はここまでですから」とサッと帰る人だって多い。
ただ、これは職種と個人のありようにもよります。
欧米人はみんな定時に帰ると信じられていますが、長時間仕事する人はする。
必要と思えばスンゴク働きます。。
ただ、皆んながやるから自分も仕方なく、というのはない。
ここは個人の問題、ハッキリしています。
自然がいっぱいの国かどうか
そして9、自然がいっぱいの国。
イギリスも都市部から出れば自然が素晴らしい場所は沢山あります。
スコットランドや湖水地方、ウェールズの西岸やイギリス南西部コーンウォールなど、美しい森や湖、海岸など。
ただロンドン付近はあんまりないかなあ。風光明媚な所に行くには2時間ぐらいかかるかしら。
以前カナダのバンクーバーを訪れたことがあるのですが、よく整備された都市が美しい自然に囲まれていて素晴らしいと思いました。
市内から30分もバスに乗ればあればスキーに行けちゃう!
いいなあ、理想的なだな、と憧れました。雨季は毎日雨らしいけれど。
(訪ねた友達によると、その降りっぷりは “殆ど聖書の世界だ” と言っていました)
街中に公園が多いロンドン
ロンドンで唯一素晴らしいのは街中に広い公園が沢山あるところです。
(遊具がある子供公園は別。必ず子供用に区切られています)
よく知られた公園だけでもハイドパーク、グリーンパーク、セントジェームズパーク、リージェントパーク、愛するハムステッドヒース。
その他大小まだまだあります。
管理された小規模の自然ではありますが、どこもよく管理&維持されています。
芝に寝転がれるような自由度も高い。
私の生まれ育った東京に一番欠けているところでもありますね。
「もっと街の中に公園があったらいいのに」と東京に帰る度に思います。
フーッ、やっと10番目。
ヨスさんホントすごい、よくこんなに思いつくなあ。
でも自分が住みたい所と思えば真剣にあれこれ考えますよね。
西岸海洋性気候の国かどうか
で、10番目は(できれば)西岸海洋性気候であること。
これはイギリスも入っているのですが、確かに気候的には大陸に比べればずっとマイルドです。
強烈な暑さも滅多に無いし、冬でロンドンなどを含む南部は氷点下になることもそれ程ありません。
でも!雨は多いですからね〜。
一年を通して天気が悪い日が多い。
「日本には雨季があってね…」なんてイギリス人に言うと必ずのように、
「イギリスは一年中雨季だけどね」と返されます。
冬はとにかくジメ〜ッと寒い。
上空は重く暗い雲がどんより立ち込め、下からは冷た〜い湿気がジワジワと上ってくる。
そしてこれが4ヶ月続く。
この間に気を病む人も多いのです。
でもまあ冬が厳しい分、春は素晴らしい。
それまでじっと息を潜めていた全てが萌え上ってくる生命の息吹が感じられます。
夏も湿気がそれほど高く無いので大体は快適ですしね。日も長いので1日が長く使えるし。
秋も短いけれどとても美しい季節です。
やはり四季の移ろいがあるところが私は好きです、冬が長いのを除けば。


私個人の独断と偏見ではあるけれど
あ、これは全部ワタシ個人の独断と偏見によるものです。
私はロンドンでしか暮らしたことがないし、人それぞれ感じ方も違うと思うので。
ロンドンには元々一年の予定で来たのです。それが今年で29年目。
その間イギリスも随分変わったように思います。
いいとこ悪いとこ、それぞれですが、一概にこの国がいいとか悪いとか判断するのは難しい。
最後に選ぶのは自分
どんなに良いシステムに恵まれていても困ったところはあり、その逆もまたありです。
移住するのにイギリスを薦めるか?と訊かれたら?
「うーん、特にオススメしませんが、お好きにどうぞ」と言うところかな。
外国に移り住んだら大変で当たり前、良いことがあったらラッキー!と覚悟して、そこに入ってしまえばなんとかなるんですから。
最後に私が付け加えたい条件は
最後に、私がこれまでの10項目に付け加えるものがあったら。
それは核のない国です。
核以外のエネルギーで国の供給を賄おうとする国。
そしてなるべく自給自足の国ですかね。
そして飢える人の無い国。
これも全世界にそうなって欲しいけれど。
個人的にはニュージーランドとか憧れます。
行ったことないんですが、是非訪れてみたい。
冬の間なんか、どうやって移住できるか、夫とそんな話ばかりしてますよ〜。
ヨスさんのブログに喚起されて思わず長々と書きました。