ウィル・スミスがクリス・ロックをステージ上で平手打ち!
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今年2022年アカデミー賞授賞式の翌朝、BBCニュースのトップで語られたのは想像できるだろう。
受賞作品でもなんでもない。
ご存知の通りの「ウィル・スミス平手打ち事件」だった。
彼が客席からステージに上がり、
司会者クリス・ロックにツカツカと早足で歩み寄り、
いきなり思い切りクリスを平手打ちした。
その映像が何回も映し出され、その前後のやりとりやらが報じられた。
2022年アカデミー賞の最も大きな話題
私は質の高さで話題の日本映画「ドライブ・マイ・カー」が何か受賞しただろうかと、期待しながら番組をつけたのだ。
BBCは「平手打ち事件」一色で、作品賞や俳優への賞などの話題はずっとその後だった。
外国作品賞などは時間が足りないらしく話題にもされない。
「ドライブ・マイ・カー」外国作品賞を受賞したと知ったのは、後のオンライン情報でだった。
何が引き起こした事件だったのか?
「何コレ!?」
ニュースでは、ウィルが事を起こす前に司会者クリス・ロックがウィルの奥さんの容姿を揶揄した様子も伝えていた。
彼女は脱毛症であると公にしているそうで、その場では頭には帽子も何も被っていなかった。
それをクリスが彼女に向けて、「GIジェーン(軍隊の映画で主人公が坊主頭)」に引っ掛けたジョークを言ったのだ。
人の容姿をネタに笑うなんて悪趣味極まりない。
調子に乗るにも程がある!
だが映像を見るとウィル・スミスは最初、このジョークに笑っている。
最初は思わず笑っちゃったのかも知れないし、笑って済まそうとしたのかも知れない。
だが隣に座る奥さんが面白くない顔をした。
(当然の話だ)
それを見たウィルがハッとなり、ステージに駆け上ったのだ。
何でもアジェンダにしたがるイギリス人?
この日、夫の親戚ワッツ・アップグループ(日本のLINEのようなチャットアプリ)で、この話題が出た。
「あれは絶対仕組まれたことだと僕は思う。ワイフは絶対に違うって言って、意見が分かれてるんだけど、どう思う?」
に始まり、
「いや、ウィル・スミスが切れただけだと僕は思うな」
「いい役者だしj、彼のことは好きだけど、あの態度には賛同できない」
「予め仕組まれたことでなかったら、アカデミー協会はウィルに与えられた主演男優賞を剥奪するはずだよ」
「今の社会情勢を考えても、公で暴力を振るったのはアカデミーに悪い例を作ったに過ぎない」
などなど、しばらく続いていた。
この中にはイギリスの劇場経営や演劇界に深く関わる従兄弟たちがいる。
ステージの「舞台裏」をよく知る人達だ。
「脚本にあったことに決まってる」という意見にはちょっと驚いた。
あれで得する人や効果をあげることなんて一つもないではないか。
いるのか?
「百害あって一利なし」
それが私の意見だが、本当のところは部外者には分からない。
「百害あって…」と思うのはナイーブ?
私が彼の奥さんの立場だったら、
「ったく余計なことをしてくれたわ」
と思うに違いない。
ウィルは自分のワイフのために立ち上がった訳でも何でもなく、ただ自分の怒りと気まずさのやり場をクリスにぶつけただけ。そう映った。
(グーでなかったのはその分腰が引けてたのか、それぐらいの分別はあったのか…)
これで集めなくてもいい要らぬ関心を妻のジェイドは世間から集めることになる。
同情と好奇心、それから後に続くであろう夫や家族との今の関係、プライベートな様々。
これからしばらくゴシップ記事のトップになる。
会う人会う人に「その後どうなりました?」と好奇の目を向けられる。
それとなく頭皮に視線を送られる。
同じ立場だったらどうする?
「悪い話題でもあった方が何もないよりマシ」とハリウッドでは言われるそうだが。
それにしてもネガティブ要素が多すぎる。
夫婦で後から色々釈明したりしているようだが。
ホント、キレてその場の怒りに任せて行動を取ることでいいことは一つも無い。
ウィル・スミスは、
「いいトシしてアンガー・コントロールのできない奴」
となり、
クリス・ロックは、
「大きな場を任せるには思慮が足りない、おふざけの度が過ぎる品格の低いヤツ」
となる、かな?
まあそれもこれも、ミリオネアー同士の個人的イザコザ。
そう思えば全てがアホらしく、どうでもいいとも言えるのだけど。
ゴシップとしてただの笑い話にして欲しく無い
でもこれをただのゴシップとしてうやむやにして欲しく無いと思う。
「腹の立つことを言われたら暴力で返してもOK」という印象を子供達に与えて欲しくないのだ。
「有名であること」「人気があること」が理由で、個人が暴力を許されたら、それが団体レベルになり、ひいては国家レベルでも通用するようになる。
「権威があること」「力があること」で「オレの気に沿わぬ事をしたらこれだかんな」で戦争を引き起こしてしまう奴もいる。
(人を巻き込むなよ!!)
それにしてもね、人の楽しみを奪うヤツ、いい加減にして欲しい。
せっかく「コーダ」みたいに、低予算でもその作品の良さ、演技力の素晴らしさが評価された映画が作品賞を取ったというのに!
授賞式から一夜あけて、受賞作品が話題にも上らない。
この「事件」のおかげで、すっかり作品も受賞役者も霞んでしまったではないか!
いいトシをした2人のオヤジのエゴが、そこまで積み上げてきた人たちの努力を蔑ろにする、そちらに腹が立つー。
ドライブ・マイ・カーイギリスではオンライン配信
ところで「ドライブ・マイ・カー」、イギリスでは今の所オンライン配信だけがされている。
観たいなあ、まだ高いのでもうちょっと待ってみようかなあ。
随分前に村上春樹の短編集「女のいない男たち」に収められていた話だった。
その中で唯一読み返した作品なので、話の筋は覚えていた。
あれが映画化されるとは、それも3時間の長さに。
想像もしなかった。
それを高い評価を得る映画に作り上げる人たちの創造力、すごいなあ。
「コーダ」も良さそうだし、ゴシップまみれの舞台裏じゃなくて、いい映画そのものを楽しみたいよね〜。