「聞く力」が大事だと分かってはいるが、セールストークはどうか?
近所のハイストリートにあるドラッグストアは大手チェーン会社の支店で、品揃え多く便利な店だ。
シャンプーやローション、バンドエイドなど切れた時に行くのだが、最近というかここ数ヶ月ちょっと困ったことがある。
いや、困っているというよりは辟易しているというべきか。
シャンプーを1本、「これください」とレジに持って行く。
ハイと受け取ってからすぐにレジ打ちを始めると思いきや、そうないかない。
その前に必ず店員さんがすることがある。
マシンガンのようなセールストークにタジタジ
カウンターにはいつも色々と商品が置いてあるのだが、それらを手に取り必ずセールストークが始まるのだ。
「このシャワージェル、今半額の1.5ポンドなの。私も愛用しているんだけど、肌に優しいタイプだからとってもいいわよ!」
「このフェイスマスク、娘がいつも使ってるけど肌の調子がすっごく良いって。今なら3つで2つの値段、多めに買っておけばすごくお得よ!」
などなど、こちらに口を挟ませない、矢継ぎ早の集中砲火を浴びせる。
後ろに他の客が待っていない時などは「え、まだあるの?」と驚くほど中々止まらない。
セールストークにどう対処する?
その度に、
「あー、他に愛用しているものがあるから」
「えーと、家族が好きな香りのものを選んでいるので」
などなど、腰がひけた逃げの言い訳をする。
店員だって店長に、
「今週の目標は今の余分在庫を一掃すること!」
「今月の売り上げが悪ければ人員削減になるかもしれないし、いや、なる。」
などと言われているかも知れないではないか。
どこも苦しいのは一緒なのだ、今の景気状態では。
買い物スタイルの変化のせい?
この店のセールストークの激しさはここ数ヶ月で急に増してきたようだ。
やはり景気と関係しているのだと思う。
コロナ禍をきっかけに、ハイストリートの小売店はどんどん閉店に追い込まれている。
宅配を利用する人が圧倒的に増え、そのライフスタイルが定着してしまったのだ。
大手チェーンだって店舗の売上が少なければ家賃にもならないし、スタッフを何人も雇う意味もない。
おまけに不景気だし、買い控えだってあるかと思う。
私も必要最低限以外の買い物は極力しないようにしている。
このハイストリートも空き店舗がいくつもできて閑散とした雰囲気になってきた。
この2年足らずで様子が全く変わってしまったのだ。
働いている人にも尊厳があるのだが
マニュアル通りにセールストークをしているとしても、スタッフにだってもちろん尊厳がある。
彼らの生活だってかかっている。
それに対して無下に「ノーサンキュー」とパシっと最初から言えない自分の気の弱さ。
(言ってもそう簡単に引き下がってはくれないが)
それに私は旧世代。
人の話を遮っては失礼にあたるとキツく言われて育ったのだ。
(言い訳)
ただ困るのは、その儀式を一通り終えないと精算してくれないのだ。
悪いと思っても、買いたくない物にお金は払えない。
不承不承ながら全部あきらめてもらうと、やっとそこでレジ打ちを始めてくれる。
「あ、でも、疲れる、毎度毎度」
(シャンプー1本買うのにどんだけ時間かかってるの!?)
すっかり疲れたその先にあるのは
女同士、特に世代が近いとポイントが絞りやすいのか、セールスの推し方も激しくなる。
まあ人にもよるんだけどね。
でもホント苦手なの、勘弁してください……
こっちだってまだ他の買い物に回らなきゃならないんだよー、と毎回心の中で思いつつ、同じような「買えない言い訳」を繰り返す。小市民的性格なワタシ。
これをゲームと思えるほどのドライさが欲しい。
そんなんでつい、この頃はそのチェーンのウェブサイトに行き、欲しい商品をまとめ買いして宅配にしてしまうのだ。
「12ポンド以上買えば配達料無料」に魅かれて。
シャンプーやローションなどの液体ものは重い。
配達してもらった方がこちらも楽だし、
店全体の利益は一緒、しかし…
その度にチクリと痛む、このアンビバレンツ。
私ってヘン?