無人ビルに閉じ込められる!?オートロックの怖さ

突然ビルに閉じ込められる!?

「ママ助けて、建物から出られなくなっちゃったよーっ!!!」

夕方に娘から受けた電話の開口一番が、「どこかに閉じ込められたから助けて欲しい」だった。

当然だがとにかくパニクっている。

全てがセルフサービスの怖さ

場所は家からはそう遠くない、ロンドンにいくつもある荷物管理会社の一つだった。

建物全体が荷物を預かる大小のユニットに分かれており、借りた倉庫部屋には自分で荷物を出し入れするというセルフサービスシステムだ。

出入りもドア口にあるキーパッドに自分のパスコードを打ち込むというもの。

気軽に使えると需要が高いらしくロンドン市内にいくつも展開している。

娘の友達が引っ越し途中で、とりあえずの荷物を預けておくのにその一つを借りたらしい。
そこで起こったトラブルだった。

イヤな予感が的中し!?

娘はその朝も、

「あの荷物保管所ビルって一度行ったけど、なんかいやーな雰囲気なんだよねえ、ダンジョンていうかさあ」

ダンジョン…て、古くて汚いの?と聞いたら、

「ううん、モダンでそれなりにちゃんとはしてるけど」
と続けて、

「全てが無機的っていうか、あんなところに間違って閉じ込められでもしたら絶対生きて帰れないだろうなあ、ってそんな感じ」

なんて不吉なことを言っていた。

牢屋みたいってかあ……大体は想像がつく。
廊下の両側にダーッとドアが並ぶ、荷物を出し入れする人たち以外に出入りはない所。

安全も自己責任のうち!?

同じチェーンのビルが我が家のすぐ近くにもあり、以前夫が友達の荷物を運ぶのを手伝いに行ったことがある。

「全てがセルフチェックでさ。受付に一人いたけど、彼も実際に来るのは鍵の受け渡しをする朝の数時間だけだって言ってたよ」

まあ早くて便利だけどね、と話していた。

利用者は借りたユニットのパスコードと鍵を渡され、あとは全て自分で管理する。
建物にいつも誰かが常駐しているわけではない、そういう管理方法なのだ。

ちょっと怖いよね、そりゃ。

時間が経つにつれパニック状態に

「友達が次の下宿先に引っ越す前になるべく荷物を減らして置きたいって言うから」

その整理を手伝って欲しいと娘は頼まれたそうな。

「彼女がモノを捨てられない性格なのはよく知ってるから、助けが欲しいのも分かるんだけど…」
(アナタがそれをいう?そりゃすごいわー、類友だな)

「でも本当は嫌だなあ」と、気の進まない様子で出かけたのだった。
そしてそれが本当になってしまった。

(現実になってほしくない事は口にするなってよく聞くけど、それか!?)

まあパニックになって無理はない、とは思う。

閉所恐怖症の私としても想像するだに恐ろしいシナリオだ。
(小部屋に閉じ込められたのではないけれど、それにしてもね)

緊急電話も留守電メッセージ!?

早口に捲し立てる娘によると、ドアのオートロックにパスコードを何度入れても全く機能せず、ビルの外へ出る厚いドアはこじ開けようもないという。

「トラブルがあった場合はこちらの内線に電話を」
に電話するも、それは留守電。

「ただいまの時間オフィスは営業しておりません。次の営業時間に折り返し電話します」
の録音されたメッサージが流れるだけ。

娘と電話をしながら会社のサイトを見ると、オフィスが閉じる時間にはまだ10分ぐらい間があった。

がっ!
その下には当日(バンクホリデイ)のみ営業時間は3PMまでと赤で表示されているではないか。

誰もいないってこと〜(汗;)

緊急脱出には消防署?

「ケータイのバッテリーが消耗するのが怖いから、ママから警察か消防署に電話して〜!」

そうこう娘とやりとりしている間にオットが消防署へ電話をした。

申し訳ないんだけど、娘と友達がこういう事態に陥ってますと事情を話し、建物の場所を言うと、

「その場所なら通報を受けて既に向かっています」
のありがたいお言葉。

結局娘たちの方からも連絡したに違いない。
待ちきれなかったんだろうなあ。

そういえば、今しがた近所の消防署からサイレン鳴らして消防車が出動したの聞こえた。
あのデポから一番近いのは多分あれだったんだ…

程なくして娘から連絡があり、「出られたよー」と。

緊急脱出には消防署?

顛末を聞くと、内側からドアを開けるためのパスコードはとうとう機能しなかったそうだ。

非常警戒ベルを鳴らそうにも、そのボタンを押すために壊さなければならないプラスチックパネルは、何を使って叩いてもヒビも入れられなかったらしい。
(ヒエ、そんなことが!?)

最後は消防隊員の皆さんが、何かしらのパワーツールを使って外からドアをこじ開けてくれた。
(うわっ頼りになる!本当に感謝、ご苦労さまです!)

これが火事でもあったらどうなったことやら。
非常事態のための対応措置がどれも機能しない、消防隊員も呆れていたという。

無人システムの怖さを思い知る

ユニットを借りた友達は、
「どうしよう、後で罰金でも請求されたら」
と心配していたらしい。

いやー、会社は消防署から「厳重注意」が言い渡されたに違いない。
そこで顧客に損害賠償は要求しないって。炎上しちゃうよ。

「とにかくこれからは、あんなところに営業時間ギリギリまでにいないこと!」
と娘にはキツく言い置いておいた。

ほぼ無人で運営しているでっかい倉庫ビルに、若い女の子たちだけで出入りしてること事態が心配だ。
監視カメラがいくつ備え付けてあったって、その先に誰もいないんじゃ意味ないじゃないの。

これからますます増えるAI管理

これからますますAIが操作するシステムに頼るようになって、実際に働く人が減らされていく。
マンパワーをできるだけ省いて経費を浮かせたい、と現にそうなってきている。

でも何かあった時、AIは飛んできて助けてくれないし、他に助けを呼んでもくれない。
それをどう人が扱って管理に役立てるかを考えるのが大事だのだけど。

AIになんでも任せて、
「何かあった時は臨機応変にやってくださいねー」
てなわけには行かないのだ。

コンピューターはプログラムされたことだけを遂行するのだから、不測の事態には応えてくれない。
何を優先させるかを判断するのは人の役目じゃないのか?

まー、今回は大事なく済んで良かったけど。
ケータイの電波が届く所だったのも幸いだったね〜。