映画「Once upon a time in Hollywood」(ある時ハリウッドで、ってな意味ですね)を見てきました。
クウェンティン・タランティーノ監督の最新作。
彼の映画ではレギュラー俳優のレオナルド・デカプリオと相変わらず人気の高いブラッド・ピットの共演です。
舞台は1969年のハリウッド。
デカプリオはテレビの人気シリーズで主役をいくつか務めた人気俳優。
ハリウッドではそこそこに成功してはいますが彼には深い悩みがあります。
それは時代の移り変わりと共に自分に役がつかなくなっていくこと。
テレビでも白黒からカラーに移り変わっていく頃。
60年代から70年代へと移行していく時代でもあり、流行りも新しくなって行きます。
そして映画の存在自体が薄くなって行く。
彼にはそこで俳優として生き残っていく自信がない。
セレブばかりの住む高級住宅地にプール付きの居を構えながら、実生活ではアルコールとタバコの切れない、幸せとは程遠い日々を過ごしています。
ちょっとしたことでキレたり泣いたり愚痴りまくったり。まあメメシイやら情けないやら。
おまけに不摂生が祟って、撮影中にセリフさえ満足に出てこなくなってしまう体たらく。
それを彼専属のスタントマン兼付き人、兼ドライバーのブラッド・ピットがなだめすかし、適当にあしらいながら何とか毎日の撮影をこなしていきます。
ワンス アポン ア タイム イン ハリウッド 予告https://m.youtube.com/watch?v=ELeMaP8EPAA
そしてこの付き人をブラピがちょっと読めないキャラクターとして演じています。
仕事も淡々とこなし、デカプリオがどんなに激昂しても使いっ走り扱いされても、自分はクールを崩さない。
古いトレーラーに愛犬と住み、ボロ車に乗っている生活を不満に思っている様子もありません。
でも彼には「妻を殺した過去がある」というまことしやかな噂も付いて回っているのです。
実は冷静さを失わないキャラを演じているだけなのでは?
そんな片鱗をチラリと見せることになる、若いヒッピーガールとの出会いが後にあるのですが……
これ以上はネタバレになるので書きませんが、全体に見た感想は?
タランティーノの映画らしく、出だしのテンポが早くノリがいい。
1969年という、70年代へと向かう時代のファッション、当時のグラマラスな車やハリウッドの撮影現場などが、多分実際のものをより色鮮やかに再現されている。
これが目にとても楽しい!
それぞれのキャラクターの役割がハッキリしていてこれからこの組み合わせでどんなドラマ展開になるのだろう、と期待させます。
正直な感想としては、最初の3分の1ぐらいはとても面白かった。
全体の映画としては、話がデカプリオとピットの話が2つの別物として描かれていて噛み合う部分が少ない、と感じました。
収束へ向かうストーリーへの布石以外に、お互いが影響し合う部分があまり無いんです。
この辺が正直物足りない。
その間にも話はどんどん進んでいきます。どこで絡み合う部分があるのだろうかと思わせながら。
全く平行線を辿る話が続くのですが、その中で、デカプリオが彼の世界でとてもいい演技を見せるシーンがあるんですよ。
それは彼が新しい役に挑む撮影シーン。
その時の彼は俳優として「いい演技をしたい」と自分のベストを出し切る覚悟で演じている。
俳優が俳優を演じる、それも普段はエゴとコンプレックスでごちゃ混ぜになったそのキャラとして渾身の演技を見せようとする。
そこだけには嘘はないんです。
私はデカプリオのファンではなかったけど、彼のこのパフォーマンスは良かった!
共演する女の子も生意気感が小気味いいし、この映画で一押しのシーンです。
そしてブラピ。
さりげなくTシャツを脱いで6つに割れた腹筋を見せたり、ブルース・リーと実戦を繰り広げる腕っ節の強さを見せたりと、実年齢を感じさせないフィジカルな部分をアピールしています。
この辺かなりファンサービスっぽい。
一方、それでいて何でこんなポジションに甘んじているのだろう?と、不透明な過去を持つ危ういキャラの雰囲気をかもし出しています。
これらの登場人物達がどんな道を辿っていくのかは映画を観てのお楽しみ、ですが、これはタランティーノの映画だということを忘れないでくださいね。
笑わせるところも多い代わりに、うんとエグイ残酷なシーンも出てきます。
映画ので出しでデカプリオの隣人として当時新進気鋭の映画監督ポランスキーが女優である妻とともに引っ越してくるのです。
そしてこの妻、シャロン・テートがどんな末路を送ったかご存知の人も多いかとと思います。
映画の公開と共に当時を騒がせたこの事件が再び取りざたされるようになりました。
映画のストーリー自体は実際に起こったことを絡ませているだけで、事実そのものを追った訳ではありません。
でもエグイ話を知りたくない人は検索しないでね〜。
この映画、先ず痛そうなシーンが嫌いな方には絶対オススメしない。
そして納得のいく収束を求めない、これも彼の映画のお約束みたいなものでしょうか。
シーン、シーンを楽しむ。
それぞれの役者のパフォーマンスが輝く部分を楽しむ。
これに尽きるんじゃ無いかなあ、と思います。
そしてこの映画、ちょっと長い。
なんと2時間40分もあります。
最後の方はちょっと体力勝負。
最終末へと向かうシーンの内容とともに、見続けるのにかなり根気が要ります。
タランティーノはいつも最後を引っ張る、引っ張る、これでもかというくらいに。
しばらくぶりで忘れてました。
映画自体には賛否両論あるようですが、デカプリオファンの方&ブラピファンの方にはおススメします!
これはこの2人あってこその映画、どちらも同等に主役を張っています。
それと山師のようなプロモーターをアル・パチーノが演じていてこれも面白い。
ハリウッドという虚構の世界を担う一端としていかがわしさ満載のキャラを、さすがという感じで演じています。
それと何と言っても映画の画像そのものがゴージャス。
プレイボーイ誌のヘフナー宅でのパーティーとかね、若き日のギラギラしてるスティーブ・マックイーンなども時代の色を添えています。
これがベトナム戦争と並行して存在していた、というのもちょと信じがたい。
それには触れていませんが、アメリカにとって恐ろしく混沌とした時代だったことは想像がつきます。
時代がより激しい方向に変わっていく様子とそこにリアルタイムで生きる人(かなり偏った世界の人々ですが)の姿、そこに漂うムードが垣間見れるようでそれも興味深い。
もちろんこれもタランティーノが愛して抱くその時代へのオマージュ。
全てが忠実ではないと思いますが、彼の想像するレトロなハリウッドと見て楽しみました。
グラマーがグラマーであった、最後の時代ですね。
ちなみにこの映画は18歳未満お断りのカテゴリーに入っています。
子供は見ちゃダメよー、嫌な夢見るからね!
(あ、それとブルース・リーのファンにもオススメしません。腹立ちますから)
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