ドーナツ桃、と言っても真ん中に穴が空いている桃ではないけれど。
イギリスのイチオシのサマーフルーツの一つがコレ!

平たい形のドーナツ桃
ドーナツと呼ぶよりは、平たい帽子のような、失敗して膨らみ損ねたシュー生地のような、
何だかひしゃげたような形の桃。
これが日本の白桃にも似た香りと味わいで、すんごく美味しいんです。
桃って美味しいですよねー、特に日本の白桃。
天の創造主様が与えてくれた至宝の一つだと思う。
うっすらと産毛のある、ピンクがかった白濁色の皮を、なるべくなるべーく薄くむく。
そこに現れる、輝く白い肌。
滴る甘い果汁、辺りを一瞬のうちに包み込むリキュールのような濃密で甘ーい香り。
ああ食べたい、
白桃が食べたい。
しかしここはイギリス。
一般に売られているピーチは、果肉がアプリコットのようにオレンジ色で、味も香りもかなり違う。
それはそれでとても美味しいのだけれど、日本の白桃とは全くの別物です。
あれはピーチであって桃じゃない、という理不尽な思いを募らせてしまう。
とにかく私は桃が食べたいんじゃあ、食べたいよお、と夏のフルーツを見回していたら、ある時目に止まったのがこの不思議な形の桃。
その名もドーナツピーチ。
どうやってこの潰れちゃったような形の桃を、消費者に親しみやすくアピールしようかと、生産者さんか卸業者さんが考え出した苦肉のネーミング。
好奇心で試してビックリ。
ああこれは、日本の白桃に似ている。
果肉の色、香り、この瑞々しさ。
うめえーーーー。

もう10年ぐらい前の話だろうか。もっと前だっただろうか。
とにかくある年突然あちこちに出回るようになりました。
以来、夏になると楽しみにするフルーツの一つとなったのです、
が、
残念なことに、私は数年前に突然、生のリンゴを食べるとアレルギー反応を起こすようになってしまいました。
リンゴ、さくらんぼに如実に現れる…
どれもバラ科の植物だよねー。
アレルギーを発症してから試しに、桃を一切れ食べてみたら、じんわりと舌がピリピリピリッ。
梨もまあ、似たり寄ったり。
コワゴワ、という心理的作用もあったかも知れない。
それでもリンゴほどではないけれど、体が「やめておきなさい」のサインを出すようになったのです。
んでまあ、近年夏になると、露天の店先に並んだドーナツ桃を指をくわえて見ているわけです。
しかしハイそうですか、と簡単には諦めきれない、この気持ち。
どんだけ食い意地張ってるんだ?私。
昔、伊丹十三監督の「タンポポ」と言う映画がありました。
主人公の未亡人が一人で経営するダメダメなラーメン屋さんを、通りすがりのトラック野郎が「行列のできる店」に仕立て上げていくお話です。
映画の中では、話の本筋とはまた別の、食べ物にまつわる人々の姿が描かれていてこれも面白い。
特に笑えたのが、自らも映画監督である藤田敏八さんが演じる「虫歯のある男」。
この男性は、我慢できないほどに痛い虫歯があるにも関わらず、自分の大好物を見つけるとつい買ってしまう。(小籠包だったかな?)
痛くてたまらないのに、それでも顎を押さえながら無理矢理食べているおじさんの姿。
何とも浅ましくもいじましい。食べ物に対する人間の業というか、執着というか、そう言うものが描かれていたっけなあ。
あれは正に私だな、とつくづく思う。幾つになっても変わらない。私だけかも知れないけれど、生きている限り続くものかな。

ところでドーナツ桃。
先日、見切り品で積まれていたのをつい買ってきて、1つだけ食べちゃった。
まあ、夏も終わりに近づいてるしね、これがこの夏一回きり、と思って。
(アレルギー症状をお持ちの方は決して真似しないでくださいねー)
日本の桃のように大きくはない、手のひらに収まるくらいのちんまりと小さなサイズ。
美味しかった、
しみじみ美味しかったです。
ああこの味、この香り。
ウットリしていたら、たちまち舌がピリピリしてきました。
慌てて花粉症の薬を飲み(先に飲んでおけよって)、体に「ビックリさせてゴメンね、でも味あわせてくれてありがとう」とお礼を言いました。
さらにゴクゴクと水を飲み、晩夏の味にお別れを。
「また来年ね!」(ほんと、食い意地張ってるよねー、呆れるわ)


