映画「ボヘミアン ラプソディ」を見てきました。実はこれで2回目。
1回目は一人で、次は夫と一緒に。
まー、最初も感動したけど、2回目はもっと楽しんだ。もっと感動しました。
特に私たちの年代、ライブエイドの興奮を覚えている世代にとっては感情移入せずには見られないと思います。
ボヘミアンは言わずと知れた80年代イギリスロック界を代表するバンドの一つ「クイーン」のリードシンガー・フレディ マーキュリーの伝記映画です。
ほとばしるばかりの才能を持ち、ギタリストのブライアンとドラムのロジャーが属していたバンドに加わったのを皮切りに、グイグイと音楽の方向性をリードして行くフレディ。
デモテープがエルトン・ジョンをもマネージするプロデューサーに認められ、EMIと契約してトントン拍子に有名になって行く。
私生活では有名になる前から付き合っていたガールフレンドと結婚し(知らなかった、結婚してたんだ!)、日本やアメリカツアーも成功させ、ロック界へのトップへと駆け上がっていきます。
特に大大ヒット曲のボヘミアンラプソディーを生み出す経過がスッゴク面白い。
実験に実験を重ね、新しい音楽を生み出して行く。
そしてついに、3分の長さが普通というシングルの常識を覆す6分の曲、それもオペラを彷彿とさせるユニークなあの曲が生まれます。
そのプロセスが描かれ、本当に見ているだけでワクワクします。
また自信たっぷりに振る舞う一方で、自分が何に属するのか、いつも不確かで安定しない彼の様子も描かれています。
インド系でタンザニアからの移民の息子であるフレディ。
確かにちょっとエキゾチックな面立ちだとは思っていましたが、何かにつけてパキスタンなどを中心とする中東系移民に対する蔑称を面と向かって投げつけられている。
それは無名の若い頃から有名になっても変わらない。これにはちょっとショックを受けました。
フレディが若い頃は70年代、有名になってからもまだ80年代ですからね。
異民族に対してもゲイに対しても、あからさまな差別が今よりもさらに攻撃的に彼らに向けられた時代でした。
いつも新しいもの、美しいものを求めて常識を打ち破って行くと同時に、いつも不安定で痛々しいくらいの繊細さを持ち、みんなから愛されたい、認めて欲しいと思っていたフレディ。
映画では痛々しいほどの繊細さです。
ロック界のスーパースターとして常にヒット曲を求められるストレス、同時に自分の性的嗜好から音楽よりも自分の私生活にばかりメディアの注目が集まることによるストレス。
結婚生活も破綻し、バンドメンバーとうまくやって行くことも加速的に難しくなっていきます。
彼は言います。
「I want almost everything.」僕は全てが欲しい。
絶えず熱狂の中にあり、コンサートでは何万人もの観客を魅了しながらも、自身はどんどん孤独になって行く彼。そして彼をコントロールしようとする当時のマネージャーの思惑も重なって遂にバンドから離れて行くことになるのです。
そこからさらに辛い変遷を経て、最後にまたクイーンとしてバンドエイドに参加する道へと辿って行くのですが、ご存知の通り、その頃すでにフレディはエイズにかかっていたのです。
この映画が公開される前、批評家のプレビューはあまり良くなかった。
それも分かります。
何しろ子供も親と一緒なら観れるPGカテゴリーに入るように作られている。
それぞれのキャラ作りがタイプ別にはっきり分けられており、ちょっとティーン向けのドラマっぽい部分も多い。バンドのメンバーの役割もハッキリとしていて分かりやすいとも言える。
そこがちょっとなあ、と思わぬでもないけど、やはりなんといってもこの映画を支えている一番の骨子は彼らの音楽に他ならない。
次々に馴染みのある曲がストーリーに沿って出てきますが、どれを取っても素晴らしいインパクトです。そして美しく力強い。
映画が終わってから「そう言えばあの曲は出てこなかったなあ」なんてのもありましたが、それぐらい今でも覚えているヒット曲が多い。
あの曲が流行っていた頃の若い自分は別にクイーンのファンではなかった、と思う。ただバックグラウンドのようにいつも彼らの曲があったのは確かです。
今彼らの歌を聞いて、そのユニークさ、美しさ、ノリの良さにグイグイと引っ張られるように感じることに自分でも驚きました。
そしてフレディがあんなに才能に溢れていたんだ、ということにも今更ながら驚いた!
曲作りの天分もさながら人を魅せるパフォーマーです。
彼が無名の頃から言っていた大事なセリフの一つに、
「本来あるべき姿の自分になる」というのがありました。
クイーンというバンドをスタートさせ、 才能を開花させ、ロックスターの自分を作り上げていったフレディ。
そんな彼が最後に到達したのは、自分の周りにある本当の愛に気づき、自分の愛を周りに与えることを知る、という正に「本来あるべき姿」でした。
映画のラスト20分、ウェンブリースタジアムで催されたバンドエイドコンサートでのパフォーマンスへとつながっていくのですが、これはもう泣きますよ。号泣ものです。
観て、是非映画館で観て泣いてください。ネットフリックスに落ちてくる前に。
スタジアムの観客は殆どCGだと分かっていても、カメラがざあーっと観客をドローンで撮って行くように写して行くところでは、ゾワゾワゾワーッと背中に鳥肌が立つように感じました。
主役のレミー・マレックの熱演も手伝って、自分もあの熱狂の中にいるような臨場感のあるラストシーンとなっています。
そしてやはりそれを支える音楽が沁みる。改めて音楽って素晴らしい、と思いました。
ところで余談ですが、前代未聞6分あまりの「ボヘミアンラプソディー」を初めて全曲流したラジオのディスクジョッキーがケニー・エベレットだったのには驚きました。
(またこの役者が仕草も雰囲気もソックリ、すぐにそうだと分かりました)
エベレットは私もいくつかの追悼番組でしか知らないのですが、ラジオの人気パーソナリティであり、すっごく面白いコメディアンでした。フレディとは仲のいい友達だったそうです。
そしてエベレット自身も実はゲイであり、彼も後年若くしてエイズで亡くなったのです。
ボヘミアンラプソディー、先日夫と観た時は映画館の中でも一番小さい部屋での上映でした。ロングランでかなり長くやってますからね。
批評家には叩かれても、フタを開けたら大ヒット。
そう言えばタイトルとなったこの曲も同じ運命だったなぁ〜。
コメントを残す