毒があるブルーベルを食べちゃう?イギリスの森に住む小さな鹿たち

イギリスはブルーベルの季節!

水仙が終わろうとする4月初旬頃に早咲きの花が咲き始める。
2週間ほどで満開になり、下旬には森の中、原っぱなどそここが青紫のブルーベルでいっぱいになる。

新緑の季節でもあり、若い緑の間から差し込む日を受けて浮かび上がるように咲くブルーベルの姿は夢のようだ。

「フィールド・オブ・ドリームって感じだなあ」
と言ったら、
「え、ケビン・コスナー?」(フィールド・オブ・ドリームという題名の古い映画の話…)
と一緒に散歩をする夫に笑われた。

言うと思った…

呆れたような私の顔を見てか、
「そういえばブルーベルを食べちゃう鹿がいるの知ってる?」
と急いで話題を変えて聞いてきた。

ブルーベルを食べる鹿?

イギリスではブルーベルの季節になると、
「ブルーベルの名所ベスト10」とか、各地のブルーベルが多く咲く地名が時期や場所の名前などと共に新聞やネットの記事になる。

ロンドンから比較的行きやすい場所だとエセックスとか、ハンプシャーとか、必ず名前が挙がる有名な森や場所がいくつかある。

その中でも数カ所、特にサフォークではブルーベルを食べる鹿が大きな被害を与えているというのだ。

「写真だけ見ると小さくて可愛い鹿なんだよ」

鹿の名前は忘れたけど、と夫が言うので帰ってからググってみた。
確かにいっぱいネットに載っている、その鹿が。

小さな生き物が生み出す大きな被害

名前はマトジャック(Mutjac deer)鹿。

とても小さな種類の鹿で、大人でも肩までの高さが50cmほどしかない。
体重も18kgぐらいで、小ぶりな中型犬ぐらいのサイズだ。

顔にV字型の模様があり、そのVの上先端に続くようにして短い角が生えている。

子鹿はミニチュアバンビみたいで、写真だけ見てもそれはそれは可愛らしい。

この鹿が、好物なのかどうかは知らないが、ブルーベルを食べちゃうというのだ。

ブルーベルには毒があるの?

ブルーベルには、動物を死に至らしめるほどではないが、多少の毒性がある。

ほとんどの動物はこれを知って食べないが、なぜかこのマトジャック鹿にはブルーベルの毒に耐性があるらしく、花でも葉でも食べてしまう。

生態系の不思議。
毒のある生き物には必ずそれに耐性のある生き物が存在する。

それで自然のバランスを保っているのだろうか。

元々イギリスにいた鹿なの?

マトジャック鹿は元々イギリスにはいなかった動物だ。

記録によれば1838年に中国から運ばれ、ロンドンから遠からぬウォバーン公園(Woburn Park)で飼われていた。

世界中のあちこちからイギリス人が動植物、遺跡など、何でもかんでも集めていた時代でもあるし。

最初は、こんな可愛い鹿が公園にいたら良い絵になるだろう、ぐらいに考えたのかも知れない。

だが、柵の中だけで飼われていた鹿の中から脱走者が出る。
(これも必ず起きることだ、分かってるはずなのに!)

一方、イギリスに生息していた狼や山猫は人の都合で次々に猟で狩られ、とうとう絶滅してしまう。

天敵のいなくなった鹿は、キャッホー!とばかりにどんどん繁殖する。
増えた鹿は、森の植物、木の樺をあっという間に食べ尽くしてしまう。

森の生態系が壊されていく…

イギリス中に住む鹿なの?

現在マトジャック鹿はイギリス南部に広く繁殖して、森の厄介者となっている。
(北部には北部の、別の鹿が問題となっているが)

そういった記事がいくつも見られる。

もちろん一応保護されていて、勝手に一般人が獲ったりしてはいけない。
だが増えすぎた鹿の数を抑えるために、規制をかけた猟が行われてはいた。

だが2020年以来のパンデミックで、それも不十分だったと言う。
そしてこの2年また数が増え、森の厄介者となっている、と。

これだけ読むと、

なんとまあ、人間は勝手なものか、と思う。

元々いなかったものを遠くから連れてきて、増えすぎたら害獣扱い。

(数を抑える方法は意見の分かれる所でもあり、常に争議の的になっているようだ。)

鹿で有名なロンドンの公園もあるけれど

ロンドンでもリッチモンド公園には鹿がたくさんいる。
こちらは普通の大きい鹿で、態度も負けないくらいデカい。

人は攻撃してこないと知っているのだ。

奈良公園もすごいよね。
餌をくれ!とかなり攻撃的になる鹿もいて、私は正直可愛いとは思えなかった。
(遠い修学旅行の話だけど…)

ハムステッドヒースの森の中で小さな鹿を見たら感動するだろうな、と想像してみるが、それは1、2頭までの話。
何十頭といたら脅威以外の何物でもないと思う。

まあヒースには常に犬がたくさんいて、鹿には居心地のいい所ではないだろうけれど。

自然と人には境界線が要る。
人が自然を生活に取り入れるのはいいが、自然のサイクルに人が手を加えてはならない。

タブーを破って、自然のバランスを崩した結果がこれだ。
自分もその一端だと分かってはいるものの。

それで今みんなして痛い目に遭っているのではないか。
地球温暖化しかり。

これからは、ブルーベルを見る度にマトジャック鹿のことを考えるかも知れないなあ。
ちょっと哀しい、小さな鹿の話を。

ヒースにもいる、厄介者が

そういえばヒースにはここ数年、黄緑色のインコが生息している。

最初見かけた時は、とても冬は越せまいと思ったけれど、とんでもない。
その数増える一方で、今ではグループになって森のギャングよろしく幅を利かせている。

体も小型の鳩ぐらいで、ギャーギャーとそれはうるさい。
姿といい、声といい、全く背景の景色に溶け込まないのだ。

これだって多分どこかで飼われていたペットの🦜が逃げ出したのが最初だと思う。
でなければ手に余って放したとかね。

生き物を飼っている皆さん!

くれぐれも、ペットは逃さないでくださいね!

それが5年、10年、100年で、どんな結果になっているか分からないんですから〜。