「戦火の馬」作者モーパーゴがVEデーに強調したこと&この日に最も聞かれる歌




「戦火の馬」や「世界で一番の贈り物」の原作者マイケル・モーパーゴが VE デーということで、BBCのTVインタビューにzoom出演をしていた。

5月8日はVictory in Europe で「VE デー」、1945年5月5日にドイツが降伏書にサインした日
終戦記念日その1、とでもいいましょうか。

(ちなみに終戦記念日その2はもちろん日本が降伏した8月15日。
日本人にとっての終戦記念日であり、連合軍にとって最終的な終戦となった)

それでも5月8日の方がイギリスではずっと大きく扱われる。

ドイツに勝ったということは、もう空襲が無いということ。
直ぐ近くを警戒しないで済む、人々にとって戦争が終わったという実感が湧きやすかった。

(一方まだ東南アジアで日本と激戦を繰り広げていた人たちは、「自分達は忘れられた存在感」が強かったらしいが。8月15日はちょっと忘れられがち。)

今年は戦後75年ということで、ここイギリスでも大きな式典が設けられる予定だった。

が、今年2020年は事情が事情。
コロナウィルスの収束もまだ遠い話で、大勢の集まる式典その他は全部キャンセル。

それでも人々は外に出、距離を置いてこの日を祝ったりもしているらしい。
近所では見なかったけれど。

場所によっては、住宅街の通り全体が皆40年代の服装をして、旗を飾った家の前に出てお祝い。
安全距離を置きながら音楽を奏でたりお喋りに興じている、そんな映像も見た。
(75年前とそう変わらないレンガの家の前は違和感がない)

BBCなどテレビでは従軍経験のある男女をzoomで集めインタビューに長い時間を費やし、これらの中継を朝のニュースでも昼のニュースでも延々延々ととやっている。

Koppa
他にニュースもないし、明るい話題がひとつも無いからなあ
オット
Celebrate (祝う)じゃなくて、Commemorate(亡くなった人たちにリスペクトを払う)日だと言うべきだ!

でも V はヴィクトリーの V だしね。
ランチを食べながらBBCニュースを見てそんなコメントを飛ばしている時に、モーパーゴ氏のインタビューが映った。

スタジオのキャスターの
「戦争をどう子供たちに伝えていったらいいでしょう」

の問いに氏は、

「VEデーは子供達が外へ出て、お祭りに参加する日だと思わせるためのものではない」

「第二次世界大戦では世界中で7千万人以上の人が亡くなっている。イギリスや連合国、ドイツや日本だけではなく他の多くの国を巻き込み、多大な犠牲者を出した歴史的事実なのだ」

他にも色々と戦争に関するエピソードなどにも触れていたけれど、VE dayは重い歴史があったという事実を心に留める日なのだと、最後にそう強調していた。

重い史実も時間が経つとノスタルジックな部分が付け足されがちだ。

それに元々、コロナウィルスと闘うこの状況をを戦争に例える人も多い。

*国民は様々な貢献、犠牲や忍耐を強いられるが、敵を倒すために一つになって頑張っている。
*前線で闘う人々(医療関係者&キーワーかー)に感謝の気持ちを忘れない、その為には多少のことは我慢する。
*これらを国が一丸となって続ければ、戦争でそうだったように、必ず勝利はやって来る。

唯一違うのは、
「今回は日本やドイツを相手にではなく、全世界が共通の見えない敵と闘っている」こと。

オット
それにしても、ジョンソン首相はチャーチル前首相と立ち位置が似てるよなあ

チャーチルも戦前は軍人としての失敗もあり評判は高くなかったが、戦争でリーダーシップを見せて支持を集めたらしい。

ジョンソン首相もブレクジットでは散々批判を浴びまくりだったけれど、今はコロナと闘う国のリーダーとして国民の信頼を集めていると感じる。

年の初めにコロナ感染が武漢で拡大しているのを知りつつ、対応が全く遅れたことで多くの犠牲者を出した政府の責任は大きい。

それでも、ジョンソンが自身がコロナに感染し、「集中治療室まで行ったのを生き延びて戻って来た」事実が人々に希望を与えたのは確かだと思う。

チャーチルの場合は戦争中のリーダーシップの強さと戦争を終結させた功績は称賛を浴びたものの、戦後は支持されなかった。

その時代の役割を果たして政治生命を終えた。
代わりに歴史に名前を残したけれど。

この先イギリスがどこへ向かっていくのかはまだ分からない。
(何しろヨーロッパで一番コロナ死者の多い国になってしまった。2020年5月8日現在で既に3万人越え)

チャーチルは役目で成功を収めて、その場を退いた。
ジョンソンの場合は、まだ先が全く見えない。

ところでイギリスでVEデーを祝うとき、必ずBGMとしてかかる歌があるんですよ。
その名も「WE’LL MEET AGAIN」
WE’LL MEET AGAIN

いつになるか分からないけれど
私たちは必ずまた会える
ある晴れた日に

そう始まるこの歌は、40年代をよく覚えている世代には、最も大事な歌の一つ。
スローでとてもノスタルジック。

時代は変わっても、会いたい人に会いたいよね。

マイケル・モーパーゴの本は本当におすすめ。
戦争を扱った話でも子供にも分かるような優しい語り口で書かれていて、とても読みやすい。

でもその優しさがかえってグイグイと心に刺さるんだけど。
子供にも大人にも読んで欲しい。

戦争もので推薦するのは、

「戦火の馬」_映画や舞台にもなったけれど、原作は馬の視線で書かれておりそれがとても新鮮。

「世界でいちばんの贈り物」_第一次世界大戦で本当にあったことをベースにしたお話。まあ涙無くしては読めません。

「兵士ピースフル」_いじめられっ子だったモーパーゴ少年が今は亡き1兵士から生きることの大切さを教えられる。代表作の一つ」

どれも第一次世界大戦が舞台。
ホントに刺さるよ〜。